久しぶりに小説を読みました。
ちょっと時間ができたので、なんかたまには読んでみるかと思い。
今日はそんな読書感想文です。
第167回芥川賞受賞
『おいしいごはんが食べられますように』
高瀬隼子 著
この本のメインキャラクターは3人。
二谷というそこそこ仕事できるけどなんとなくずっとやる気なさげに見える男。
芦川という体弱めで次の日お詫びにお菓子作ってきちゃう守ってあげたくなる系の女。
押尾という何にでも頑張るまっすぐなタイプで芦川のことが嫌いな女。
この3人と彼らの働く会社の人たちのいろいろなこと(といってもなんだか妙にリアルな大きい事件も起きない日常)を「食べること」を通じて描いた作品になっています。
とりあえず先入観なしにレビューなどを全く見ずに読んでみました。
ここからちょっとネタバレを含みますのでご承知おきください。
わたし、食に関しては二谷と同じようなタイプかもしれん…と自分でもゾッとしちゃった。
家族のために今は毎日ご飯を作りますが、そもそも自分一人のためには時間をかけてご飯を作りたくないタイプです。
そして差し入れの手作りお菓子とか苦手なので(お土産とかのお菓子もあまり好きではない)、食べずに夫さんにあげるか、ごめんなさいとこっそり捨ててしまいます。
だから二谷が芦川さんの作った料理を食べた後にカップ麺をこっそり食べていたり、芦川さん手作りのお菓子を夜中の会社でぐちゃぐちゃにして捨てている描写を見て「これはわたしなのでは…」と思ってしまいました。
そりゃもちろんおいしいものは食べたいんですけど、わざわざ自分では作らないし(子どもたちや夫さんがおいしいと言ってくれるなら作るけど)、コンビニ弁当やスーパーの惣菜やそこらへんのファミレスなんかの食べ物の方がよっぽどおいしいし衛生的だと思うんです。
他の人のレビューを見たら「二谷はヤバいやつ」って結構書いてあって胸がギュッとなりました。
いや、食に関すること以外は二谷に共感できないからセーフ…？
芦川さんはまさに押尾さんタイプだと嫌っちゃうよねと納得。
押尾さんは真面目に仕事を頑張って、たまに起きる偏頭痛だって特段言わずに薬を飲んで仕事をこなして、学生時代の友人の余興だって頼まれたからには一生懸命やっちゃう人。
一方の芦川さんは偏頭痛が起きたら早退するし研修はドタキャンするし相手先への訪問もやめるし、そのくせ翌日に「昨日はすみませんでした。お詫びに…」と早退後に作った御菓子を配る気遣いができる風(たぶん本人に意識的な計算はない)な人。
わたしも芦川さんとは友達になれないなと思う。
「お味噌汁だけでも作って食べた方がいいよ！」とお母さんか、と突っ込みたくなるようなことを言われた日には、わたしだったら「うるせー！」と張り倒してしまいそうです。
なのに二谷はそんな芦川さんがお嫁さん候補としてちょうどいいからくらいの感じで関係を持つ。
その割に本音では「なんでこんなに料理に命かけてんだ？」くらいの興味のなさという異常さというか付き合う謎というか。
結婚するかしないかは置いといて、あの小説の最後は最早ホラー小説かと思いました。
二谷、お前は一生芦川さんのご飯を食べた後にカップ麺を食うのか？
押尾さんがあまり報われてなくて可哀想だなと思ったけど、本人は切り替えが早くてなんだかんだ次の仕事も責任持ってやるだろうし、二谷なんかと最後まで関係持たなくてよかったねと。
押尾さんには幸せになってほしい。
これを読んでいて最後まで明かされなかったのが、二谷以外に芦川さんのお菓子を会社のゴミ箱に捨てていたのは誰なのか？ということ。
おせっかいパートの原田さん(大体どの職場にも1人はいる話好きなおばさん)は押尾さんが捨てたんだと決めつけていたけれど、押尾さんは「わたしはゴミ箱に綺麗に捨ててあるのを見つけていじわるで芦川さんの机に置いただけ」だと言うし、二谷はそもそもぐちゃぐちゃにして捨てていたので綺麗なまま捨てていたのは他の誰かだし、結局最後まで読んでもその犯人は分からなかった…と思う。
心の底では芦川さんを心配するふりして、実は嫌な感情を抱いていた人がいたのか、はたまた、芦川さんが気にしてほしくて自分でやったのか…(確か自分の分のお菓子もあった)。
まあそのへんの考察は苦手なので曖昧なままでいいですけど。
あと、どうでもいいけど上司の藤さんが女性写真の飲みかけのお茶を勝手に飲む描写が気持ち悪くて最初の数ページで挫折するかと思った。
その後そんな描写はなかったので読み進められましたが。
「食べること」を共通点として、ここまで歪んだ本音と建前の渦巻く人間関係を描くことができるのね…と読み終わった後は妙に感心してしまいました。
Amazonのレビューを見ていたら、結構きれいに評価が分かれていて、確かにな、と思ったり。
後味がいいかと言われるとあまりよくないけれど、読んで損したとは思わなかったです。
ただ、確かに二谷はサイコパスというかクソ野郎だなと思う描写はちらほらある。
たぶんそれが二谷にとっての「芦川さんへのいじわる」なんだろうけど。
芦川さんとの今後を覗き見してみたい。
とりとめのない文章になってしまいましたが、久しぶりに小説を読んだらどこかに書き残しておきたくなったのでここで消化しました。
おすすめの小説があったら教えてください。
次は『コンビニ人間』と『とんこつQ&A』を読む予定です。
ちなみに怖いのと人が死ぬのは無理です。
それではこのへんで。
＊ーーーーーーーーーーーーーーー＊
ランキング参加中です。
クリックお願いします(^o^)
