久しぶりに小説を読むと、次は何を読もうかな、と考えるようになりました。
というわけで今回も読書感想文です。
第155回芥川賞受賞
『コンビニ人間』
村田沙耶香 著
ネタバレありますのでご了承ください。
コンビニで働く主人公目線でずっと話が進みます。
主人公は幼い頃から他の子とは違う、今で言う発達障害のようなものを持った子。
地面に落ちて死んでしまっている小鳥を見てみんなが「お墓を作ってあげよう」と言う中、「お父さんが焼き鳥好きだから持って帰って焼き鳥にしよう」と言っちゃうタイプです。
しかもそれの何が悪いのかも分からない。
大人になって妹が泣いている子どもをあやしているのを見た時も、果物ナイフを見て「すぐにおとなしくなる方法があるのに…」と本気で思って妹が泣き止ませようとするのをあまり理解していない。
きっとこれは「治る」とか「治らない」とかじゃないんだけど、両親や妹は「早く治して」と思っている。
「普通」から外れた人間のことは、たとえ血の繋がった家族であっても理解し難いんだなと感じました。
妹は終盤に差し掛かるまで主人公に寄り添う好意的な書き方をされていたのですが、最後にやはり「お姉ちゃんはいつになったら治るの」と感情を露わにしていたので、心の内ではずっとそう思っていたんでしょうね。
白羽というこちらもまた世間の「普通」から外れている働かない(働けない?)、そのくせコンビニ店員などを見下し、縄文時代からの話を持ち出し、義理の姉を「鬼嫁」とスマホに登録して逃げ回るというどうしようもない奴が出てきます。
結局は彼も「いい仕事に就く」「結婚する」「子どもを育てる」といった世の中ではそのレールに沿って進んでいくのが「普通」と思われるところに乗れなかった人。
利害が一致して(?)主人公の家に転がり込んでくるわけですが、それをきっかけに主人公のコンビニ店員としての生活が揺らいでいきます。
仕事が認められていると思っていたのに、白羽と同棲をしたことがバイト先でバレるとその話ばかり。
私は仕事がしたいのに。
コンビニの声を聞いて過ごしていたはずの彼女が、結局は人のいろいろな感情の混ざった好奇の目によって掻き乱されてしまいます。
物語の終わり方が、新しい物語の始まりとして締めくくられているのがよかった。
ハッピーエンドなのかそうじゃないのかは分かりませんが、少なくとも主人公にとってはハッピーなことがこれから起こるといいなと期待させる終わり方。
あとがきの解説にもありますが、いわゆる結婚して子どもが産まれて…というベビーエンドではなかったので、ありきたりな終わり方ではなかったのも面白かったなと思います。
主人公が友人たちや家族から「結婚は?」「仕事はまだアルバイトなの?」と聞かれるあの苦痛というか「なんでそんなことを聞くんだろう」という主人公の疑問が、じわじわと刺さります。
わたしは絶対仲のいい友人であってもそんなことは聞かないようにしているし、別に他人のそういうのに興味がないから、もし主人公がわたしの友人でもそんなことは本人が喋り出すまで何も言わないのに、とは思った。
どんな仕事をして、どんな価値観を持っていて、どんな人生を歩むかなんて、他人がずけずけと土足で入り込んでいいところではないんですよね。
たとえそれが「普通」から外れている人間だったとしても。
だってみんなの考える「普通」はその人にとっては「普通」ではないわけで、多数決の押し付けのようなもの。
主人公には「コンビニ店員」としての人生が「普通」なのであって、そのレールに沿って人生を歩んでいくのが最も効率的で幸せな生き方なんだろうと思う。
マニュアル通りに動くことが得意なら、それに合った生き方をすればいいわけで、それを他人にどうこう言われる筋合いはないんです。
自分の当たり前を世の中の当たり前と思わないようにしないとなあ、とじんわり考えさせられました。
白羽はとりあえず義姉にシメられればいいと思う。
そんな感想でございました。
みんなにとって生きやすい世の中ってなんでしょうね。
今日はこのへんで。
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